実践演習 整数系

不定方程式【積の形から約数拾い】【2016年度 東京理科大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

 

 

本問は不定方程式に関する基本的な確認から、少し対応力が必要な設問まであります。

整数問題の有力方針

  • 積の形から約数の拾い
  • 余りで分類
  • 評価する(範囲を絞る)

と、整数問題に対する有力な方針は3つあります。

もう少し単純な例題で確認したい方は以下に折りたたんでおくので、「+マーク」をクリック(タップ)して確認してみてください。

 

 

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積の形から約数の拾い上げ

例題:\(x ,  y\) は自然数とする。\(xy+2x+3y=6\)  となる \(x ,  y\) の値の組を全て求めよ。

解答例

与えられた方程式は \((x+3)(y+2)=12\) と変形できる。

\(x+3 , \ y+2\)  はともに自然数なので

\((x+3 ,  \ y+2)=(1, 12) \ (2 , 6) \ (3 , 4) \ (4 , 3) \ (6 , 2) \ (12 , 1)\)

よって ,  \((x , \ y)=(-2 , 10) \ (-1 , 4) \ (0 ,  2) \ (1 , 1) \ (3 , 0) \ (9 , -1)\)

このうち、\(x , \ y\) がともに自然数である組は

$$(x , \ y)=(1 , \ 1)$$

実際にはもう少し手際よく絞れたりしますが、このように積の形を無理やり作って \(12\) の約数を拾い上げていきます。

整数問題の中でもかなり頻出な考え方です。

余りで分類

例題:\(m\) を整数として、平方数 \(m^2\) を \(3\) で割った余りは \(2\) とならないことを示せ。

解答例

以下 , \(k\) は整数とする。

\(<1> \  \ m=3k\)  のとき

\(m^2=9k^2\)  で , \(m^2\) を \(3\) で割った余りは \(0\)

\(<2> \  \ m=3k\pm 1\)   のとき

\(m^2=9k^2\pm6k+1=3 \ (3k^2\pm2k)+1\)  で , \(m^2\) を \(3\) で割った余りは \(1\)

よって、平方数 \(m^2\) を \(3\) で割った余りは \(0\) または \(1\) に限られ、題意は示された。

今回の例題の場合、世の中の整数を \(3\) で割った余りで分類しました。

\(3k\) ,  \(3k+1\) ,  \(3k+2\)  と分類してもよいのですが、\(3\) で割って \(2\) 余る数というのは

「 \(3\) の倍数から見て \(1\) 足りない数」

ということもできるため、余り \(1\) のときと、余り \(2\) のときを合わせて

\(m=3k\pm 1\)   のとき

としてやるという工夫もよくやります。

また、「何で割った余りに注目するか」ということもレベルが高くなってくると大事になってきます。

評価する(範囲を絞る)

例題:\(xyz=x+y+z\) を満たす自然数 \((x , \ y , \ z)\) の組を全て求めよ。

解答例

問題の対称性からひとまず \(x \leq y \leq z\) として考える。

このとき , \(x+y+z \leq z+z+z\) であり , 条件から , \(xyz \leq 3z\)

すなわち , \(xy \leq 3\)

これより ,  \((x , \ y)=(1 ,  \ 1) , \ \ (1 , \ 2) ,  \ \ (1 , \ 3) \)

\(<1>  (x , \ y)=(1 ,  \ 1)\) のとき

与えられた条件式から , \(z=2+z\) でこれを満たす \(z\) は存在しない。

\(<2>  (x , \ y)=(1 ,  \ 2)\) のとき

与えられた条件式から , \(2z=3+z\) で ,  \(z=3\) を得る。
(これは \(x \leq y \leq z\) を満たす。)

\(<3>  (x , \ y)=(1 ,  \ 3)\) のとき

与えられた条件式から , \(3z=4+z\) で ,  \(z=2\) を得る。
(これは \(x \leq y \leq z\) を満たさない。)

以上 \(<1>\) , \(<2>\) , \(<3>\) から

\((x , \ y , \ z)=(1 , \ 2 , \ 3)\)

実際には  \(x \leq y \leq z\)  という制限はないので

\((x , \ y , \ z)=(1 , \ 2 , \ 3) , \ \ (1 , \ 3 , \ 2) , \ \ (2 , \ 1 , \ 3) , \ \ (2 , \ 3 , \ 1) , \ \ (3 , \ 1 , \ 2) , \ \ (3 , \ 2 , \ 1)\)

まず今回の数たちというのはそんなに大きくないだろうことが予測されます。

普通は (積)\( \gt \)(和)  にも関わらず、積と和が等しいと言っているのですから。

そして、今回の問題には「対称性」があります。

なので、いったん \(x \leq y \leq z\) という区別をつけて考えることで範囲を絞り込み、\((x , \ y , \ z)\) の組が出てきたら、その大小関係を外して答えとします。

変数が3文字以上になると、このように等式を諦めて不等式をつないでいくことが多くなると思います。

特に対称性がある整数問題ではそれを見落とさないようにしましょう。

 

 

さて、今回は特に一つ目の「積の形から約数拾い」についての色が濃い確認問題です。

約数の候補が多いとき、正面突破だと時間だけかけて間違えるという結果に繋がりかねません。

工夫できる余地があるときは工夫しましょう。代表的な着眼点については予め学習を積み重ねて自分のものにしておきましょう。

候補削減のチェックポイント

  • 符号
  • 大小
  • 互いに素かチェック(偶奇チェックも含め)

が主なところです。

(1) , (2) は人によってどこまで工夫できるかどうかにおいて差があるかもしれませんが、「約数拾い」という大きな方針を外さなければ大きな差にはならないでしょう。

(3) は割と差が付く要素が含まれていると思います。

ここではそれは伏せておきますので、自分なりにどのようなポイントがあるのかを考えてみてください。

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