問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
有名な難問であり、多くの上級参考書にも収録されています。
色々な上級テーマが含まれており、一つ一つは難関大を目指すうえで糧となるポイントなのですが、逆に
結局何が大事なのか
を見失う可能性もあります。
この問題を扱うにあたっては
大枠としてのポイント
- 存在命題と全称命題の扱い
処理上のポイント
\(a\) , \(b\) を互いに素な整数としたときの \(ax+by\) の扱い
に絞りたいと思います。
その他、周期性に関する別解なども考えられますが、ポイントを絞ることを優先し、今回は見送ります。
(以下ネタバレ注意)
+ クリック(タップ)して続きを読む 今回の問題の主張を把握します。 何を言っているのかが分からないと手の打ちようがありません。 ひとまず、言われているような図形的イメージを考えてみます。 ひとまず、格子点と直線を描いてみました。 ここから円を「膨らませる」というイメージで \(r\) を考えていきます。 直感的には となります。 逆に \(r\) が小さいときを考えてみます。 極端な話、\(r\) がほとんど \(0\) に近いようなとき、ほとんど円は点に近いような状況です。 つまり、 という可能性があるわけです。 本問は \(r\) が大きいと、円とぶつかるのは当然です。 そこで、\(r\) を小さくしていきます。 ただ、\(r\) を小さくしすぎるとぶつからなくなってしまいます。 さて、小さくできる限界はどこですか? という問いかけということになります。 \(r\) が大きいとぶつかるのは当然 と言いましたが、その式的根拠を考えていきます。 直線と円が共有点をもつということの翻訳は という2路線ありますが、点と直線の距離公式の活用の方が処理的な負担が少なくなることが多く、こちらで攻めるのが第一感です。 傾きが \(\displaystyle \frac{2}{5}\) の任意の直線を \(2x-5y-k=0\) とし、これとある格子点 \((m \ , \ n)\) との距離 \(d\) について \(d \leq r\) となれば、この直線と\((m \ , \ n)\) を中心とする半径 \(r\) の円が共有点をもちます。 つまり \(\displaystyle \frac{|2m-5n-k|}{\sqrt{2^{2}+(-5)^{2}}} \leq r\) が成り立つときに共有点をもつことになります。 全称命題とは 全称命題 全ての〇〇に対して、**が成り立つ という形の命題です。 それに対して、存在命題とは 存在命題 **が成り立つような、ある〇が存在する。 という形の命題です。 全称命題は文字通り、「全ての」ですから、イメージとしては あれも、これも、それも \(\cdots\) というイメージです。 存在命題は、「ある」なので 「上手い」〇が存在する(一つでも存在すればよい) というイメージです。 本問において、今の全称命題と存在命題を意識してみると 任意の実数 \(k\) に対して、 \(\displaystyle \frac{|2m-5n-k|}{\sqrt{29}} \leq r\) となるような整数 \(m\) , \(n\) が存在する。 という全称命題と存在命題が混在している形です。 という主張です。 ここで、\(2m-5n\) という形の整数は全ての整数を表し得ます。 この項目についてスポットを当てた話題は 例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \(a\) , \(b\) , \(c\) を整数として \(ax+by=c\) という形の不定方程式(ディオファントス方程式)の整数解 ... 続きを見る の中で詳しく解説しています。 先ほどの 任意の実数 \(k\) に対して、 \(\displaystyle \frac{|2m-5n-k|}{\sqrt{29}} \leq r\) となるような整数 \(m\) , \(n\) が存在する。 という命題は 任意の実数 \(k\) に対して、 \(\displaystyle \frac{|N-k|}{\sqrt{29}} \leq r\) となるような整数 \(N\) が存在する。 という命題で考えればよいことになります。 ラフな言い方で言えば という先ほどの主張は という主張になるわけです。 分母を払えば 任意の実数 \(k\) に対して、 \(|N-k| \leq \sqrt{29}r\) となるような整数 \(N\) が存在する。 となり、この命題が真となるような \(r\) の最小値を求めればよいことになります。 これについては \(N\) と \(k\) の距離が \(\sqrt{29}r\) 以下 というイメージでとらえます。 \(r\) が大きいと、うまく \(N\) をとれる余地があり、冒頭述べた \(r\) が大きいと円とぶつかるという直感とも一致します。 ここで \(N\) は整数としてうまくもってこれるかどうかを考えるわけです。 これをふまえると ことになります。 つまり、 \(r \geq \displaystyle \frac{\sqrt{29}}{58}\) であれば、題意を満たすことになります。 この流れで言えば、あくまでこれは十分条件で、題意を満たすのであれば \(r \geq \displaystyle \frac{\sqrt{29}}{58}\) となるしかない。(なる必要がある) という必要条件かどうかは別途調べる必要があります。 これについては ということを言うことになるわけです。 つまり、\(r \lt \displaystyle \frac{\sqrt{29}}{58}\) のときには、 なにかやばい \(k\) がいて、どんな整数 \(N\) をもってきても \(|N-k| \gt \sqrt{29}r\) になってしまう。 ということになります。 【解答】ではこれを背理法を用いて記述しました。 全称命題については、特有の考え方をすることも多く、対応を知らなければ白紙になってしまいかねない問題も多々あります。 そんな問題たちに対応することを目的として 全称命題 第1講【恒等式として等号が成立するための条件】【1990年度 東京工業大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 「全称命題」というテーマ性のある話題を扱います。 これは分野は関係なく、「考え方」に難しさがあり、独特な議論の進め方をします。 対応を知らないと、白紙になってしまったり、見当はずれなことを場当たり的に書いて終了してしまいかねません。 全称命題だと見抜く「眼」と、見抜いた後の「対応」の両輪をきちんと揃えておき、ライバルに差をつけましょう。 シリーズ一覧はこちら 今回は恒等式となるための条件を考えるという問題です。 見た目が仰々しく ... 全称命題 第2講【一般項と漸化式】【1986年度 東京工業大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 全称命題シリーズ第2講です。 シリーズ一覧はこちら 全称命題についての対応は第1講で学びました。 全称命題特有の処理を施すわけですが、その後については「分野」ごとの常識力が問われる問題に帰着します。 (以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む 全ての自然数 \(n\) について \(a_{n}\) を割り切る素数を探すので、 \(a_{1}\) も割り切る必要があるよね? という屁理屈 ... 全称命題 第3講【整数問題】【一般項か漸化式どちらを扱うか】【1997年度 一橋大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 全称命題シリーズ第3講です。 シリーズ一覧はこちら 今回は整数分野の全称命題を扱います。 必要条件を言う部分で整数問題としての処理が求められるでしょう。 その後の十分性の確認では第2講の内容が存分に現れるので、前回の内容の確認もできると思います。 (以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む \(a_{n}=5^{n}+an+b\) とおきます。 全称命題と捉えて \(a_ ... 全称命題 第4講【整数問題の基本手法の運用に帰着】【1991年度 金沢大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 全称命題シリーズ第4講です。 シリーズ一覧はこちら 今回は第3講に引き続き整数問題に関する全称命題です。 全称命題に関する基本的な対応については第1講で扱っていますが、今一度ここでも確認します。 step1全称命題だと見抜く 「任意の」「どんな」「全ての」\(\cdots\) という類の言葉は発見のシグナルです。 step2「じゃあ \(\cdots\)」と屁理屈(考えやすい簡単なケース)を言って答えの候補(必要条件)を出す。 ... 全称命題 第5講【楕円についての論証】【1990年度 東京大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 全称命題シリーズ第5講です。 シリーズ一覧はこちら そもそも、今は「全称命題」というシリーズとしての問題としてこの問題と向き合っているから頭が全称命題モードになっていて、屁理屈を言おうと思えるかもしれません。 しかし実際試験場では何が出題されるか分かりません。 色々な問題に紛れてポンとおいてあったときに、冷静に全称命題だと見抜いて必要条件を出せるのかといった難しさがあると思います。 分野的にも整数や数 ... というシリーズもありますので、よろしければご活用ください。イメージ
イメージの立式
全称命題と存在命題
\(ax+by\) の形
参考不定方程式の整数解とその発展【ベズーの補題】【2000年度 大阪大学ほか】
全称命題について