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ある漸化式の特性方程式が虚数解をもつときに、その漸化式によって定まる数列が周期性をもつような条件を考える問題です。
睨めっこしだすと頭に血が昇ってしまいますが、色々手を動かしていくうちに打開策が見えてきます。
一難去ってまた一難という感じで、山場が次々とやってきますので、それらを払いのけ、完答するためには確かな力が必要です。
(以下ネタバレ注意)
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ひとまず実験
この3項間漸化式を「解きにいく」という方向性で動きたくはないでしょう。
そこで、実験をして様子を掴むことにします。
a_{2} について
与えられた漸化式に n=0 を代入してみると
a_{2}+ba_{1}+ca_{0}=0
で、初期条件 a_{0}=1 , a_{1}=\alpha から
a_{2}+b\alpha+c=0
ということになります。
一方、\alpha は x^{2}+bx+c=0 の解ですから
{\alpha}^{2}+b\alpha+c=0
ということになり、
a_{2}={\alpha}^{2}
を得ます。
a_{3} について
同様に漸化式に n=1 を代入すると
a_{3}+ba_{2}+ca_{1}=0
すなわち
a_{3}+b{\alpha}^{2}+c \alpha=0
となります。
一方、{\alpha}^{2}+b\alpha+c=0 の両辺に \alpha をかけることで
{\alpha}^{3}+b{\alpha}^{2}+c \alpha=0
を得て、
a_{3}={\alpha}^{3}
を得ます。
予想と裏付け
以上の実験から
a_{n}={\alpha}^{n} (n=0 \ , \ 1 \ , \ 2 \ , \ \cdots)
という予想が立ちます。
もちろん、これはあくまで予想なので、それを裏付ける必要があります。
この予想を裏付ける方法としては、漸化式と相性抜群の
数学的帰納法
が最有力手段です。
上記の実験をやっていればいるほど、
a_{n}={\alpha}^{k} , a_{k+1}={\alpha}^{k+1}
という仮定から、
a_{k+2}={\alpha}^{k+2}
という n=k+2 のときの成立に向かう橋渡しの要領が、明確に見えてくると思います。
周期性の処理
a_{n}={\alpha}^{n} (n=0 \ , \ 1 \ , \ 2 \ , \ \cdots )
という予想が裏付けられたら、次は周期性の処理です。
ご丁寧に問題文で周期について説明してくれていますが、数列 \{a_{n}\} が周期 p をもつということは
任意の非負整数 n に対して
a_{n+p}=a_{n}
が成り立つということです。
そこで、今回はこれを「全称命題」と捉えて
任意の n でも成立するんだね?じゃあ n=0 でも言えるよね
という屁理屈をかましていきます。
つまり、
a_{p}=a_{0}
すなわち
{\alpha}^{p}=1
が成り立つ必要があるというわけです。
これにより、\alpha は 1 の p 乗根ということになります。
すなわち、
\alpha=\cos{\theta}+i\sin{\theta}
という形で書ける必要があるわけです。
係数 b , c が最終的に求めたいものであることを考えると、
解と係数の関係
から、係数 b , c に関する式を立てていくことを目論みます。
この後の計算は【解答】をご覧ください。
十分性のチェック
ここまでの流れで出した b , c の値は
任意の非負整数 n に対して
a_{n+p}=a_{n}
が成り立つならば、
a_{p}=a_{0}である必要があるよね
という流れで出した、言わば
必要条件
です。
a_{p}=a_{0} であるからと言って、必ず a_{n+p}=a_{n} が成立している保証は一般的にはありません。
なので、今回は出てきた b , c がきちんと周期性をもつかどうかをチェックし、答えとしての資格があるかどうかを確かめます。
まとめ
今回の問題は
- 「実験→予想→裏付け」という手を動かすことの大切さ
- 周期性の立式
- 全称命題の扱い
と、レベルの高い上級基礎が凝縮されています。
慣れないうちは硬いかもしれませんが、噛みしめることでジワジワ良さが分かってくるスルメのような問題です。