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仮想難関大シリーズということで、東大、京大をはじめとする旧帝大、東工大、国公立大学医学部医学科などの難関国公立大を想定したオリジナルの自作問題です。
「手垢の付いていない問題で力試しがしたい」
という方はぜひご活用ください。
今回は整数の問題です。
ブロカールの問題と言われる次の問題があります。
ブロカールの問題
n を正の整数として、
a_{n}=n!+1
とするとき、a_{n} が平方数となる n を全て求めよ。
これは現在のところ
- a_{4}=25=5^{2}
- a_{5}=121=11^{2}
- a_{7}=5041=71^{2}
という3つのみだろうということが予想されてはいますが、完全解決には至っていません。
\mathrm{ABC} 予想が真であれば、有限個であることは示されているようです。
+1 という一見簡単そうに見える方は未解決で、+2023 であれば解決するというのは不思議ですね。
(以下ネタバレ注意)
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実験してみる
n がある程度小さい場合は実験ができます。
- a_{1}=2024=2^{3} \cdot 11 \cdot 23
- a_{2}=2025=45^{2}
- a_{3}=2029 (素数)
- a_{4}=2047=23 \cdot 89
- a_{5}=2143 (素数)
- a_{6}=2743=13 \cdot 211
というように、ここまでで現れた平方数は a_{2} のみです。
ただ、数が大きくなってくると、具体的に計算して素因数分解をするにしても限度があります。
ここで、
2023=7 \cdot 17^{2}
であること、及び
- n \geq 7 であると n! は素因数 7 を含む
ということに注意すると、
- n \geq 7 のとき、a_{n} は 7 で括れる
ということが言えます。
n \geq 14 のとき
n \geq 14 のときは n! は素因数 7 を 2 個以上もつため、正の整数 M を用いて
n!=7^{2}M
と表すことができます。
このとき、
\begin{eqnarray} a_{n} &=& 7^{2}M+7 \cdot 17^{2} \\ &=& 7(7M+17^{2}) \end{eqnarray}
となり、
17^{2} \equiv 2 \pmod 7
であることから、
7M+17^{2} \equiv 2 \pmod 7
ということになります。
つまり、a_{n} が素因数 7 を 1 個 ( 奇数個 ) しかもたないことになり、平方数と言えなくなります。
これにより、n \leq 13 の範囲で考えればよいことになり、心理的に大分負担が軽くなるでしょう。
1 \leq n \leq 6 のときは上記実験で潰していますから、残るは 7 \leq n \leq 13 のときということになります。
7 \leq n \leq 13 のとき
7 \leq n \leq 13 のときは、a_{n} が 7 で括れることに注意していきます。
n=7 のとき
\begin{eqnarray} a_{7} &=& 7063 \\ &=& 7 \cdot 1009 \\ \end{eqnarray}
ですが、
1009 \equiv 1 \pmod 7
ですから、a_{7} は素因数 7 を1個しかもたず、平方数になりません。
n=8 のとき
以下合同式の法を 7 とします。
a_{8}=7(8 \cdot 6!+17^{2})
であり、
8 \cdot 6!+17^{2} \equiv 1 \cdot 6+2 \equiv 1
ですから、a_{8} は素因数 7 を1個しかもたず、平方数になりません。
n=9 のとき
a_{9}=7(9 \cdot 8 \cdot 6!+17^{2})
であり、
9 \cdot 8 \cdot 6!+17^{2} \equiv 2 \cdot 1 \cdot 6+2 \equiv 0
となり、さらに 7 で括れてしまい、ドキっとします。
そこで、もう少し具体的に計算していくことにします。
\begin{eqnarray} a_{9} &=& 7 \cdot 52129 \\ &=& 7^{2} \cdot 7447 \\ \end{eqnarray}
となります。
80^{2}=6400 , 90^{2}=8100 ですから、そのあたりの平方数で探せば
- 86^{2}=7396
- 87^{2}=7569
が見つかるでしょう。
86^{2} \lt 7447 \lt 87^{2}
と、7447 は連続する平方数で挟まれるため、平方数ではないことが分かり、a_{9} も平方数でないことになります。
n=10 のとき
a_{10}=7(10 \cdot 9 \cdot 8 \cdot 6!+17^{2})
であり、
10 \cdot 9 \cdot 8 \cdot 6!+17^{2} \equiv 3 \cdot 2 \cdot 1 \cdot 6+2 \equiv 3
ですから、a_{10} は素因数 7 を1個しかもたず、平方数になりません。
n=11 のとき
a_{11}=7(11 \cdot 10 \cdot 9 \cdot 8 \cdot 6!+17^{2})
であり、
11 \cdot 10 \cdot 9 \cdot 8 \cdot 6!+17^{2} \equiv 4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1 \cdot 6+2 \equiv 6
ですから、a_{11} は素因数 7 を1個しかもたず、平方数になりません。
n=12 のとき
a_{12}=7(12 \cdot 11 \cdot 10 \cdot 9 \cdot 8 \cdot 6!+17^{2})
であり、
12 \cdot 11 \cdot 10 \cdot 9 \cdot 8 \cdot 6!+17^{2} \equiv 5 \cdot 4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1 \cdot 6+2 \equiv 1
ですから、a_{12} は素因数 7 を1個しかもたず、平方数になりません。
n=13 のとき
a_{13}=7(13 \cdot 12 \cdot 11 \cdot 10 \cdot 9 \cdot 8 \cdot 6!+17^{2})
であり、
13 \cdot 12 \cdot 11 \cdot 10 \cdot 9 \cdot 8 \cdot 6!+17^{2} \equiv 6 \cdot 5 \cdot 4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1 \cdot 6+2 \equiv 3
ですから、a_{13} は素因数 7 を1個しかもたず、平方数になりません。
これで、全て解決しました。
数字を変えると
なお、本問の数字を
a_{n}=n!+2024
に変えると、もう少しマイルドに片付きますので、余力があれば復習としてぜひやってみてください。
それについては【総括】で触れています。
追記
読者様より、4 を法とする平方剰余に注目することによる非常にスッキリした別解をいただきました。
k を正の整数として
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} (2k)^{2} \equiv 0 \pmod4 \\ (2k-1)^{2} \equiv 1 \pmod4 \end{array} \right. \end{eqnarray}
ですから、平方数を 4 で割った余りは 0 または 1 となります。
n \geq 4 のとき
- n! \equiv 0 \pmod4
- 2023 \equiv 3 \pmod4
なので、
a_{n} \equiv 3 \pmod4
となります。
これにより、a_{n} を 4 で割った余りが 3 ということになり、平方数になり得ないということになります。
2023=7 \cdot 17^{2} という素因数分解から素因数 7 に目が行きがちで、法を 4 とした剰余類に注目するのは盲点になりやすいかもしれません。
追記2
読者様より、平方数の 1 の位に注目する別解をいただきました。
n \geq 5 のとき、n! は 10 の倍数であり、a_{n}=n!+2023 の 1 の位は 3 となりますが、平方数の 1 の位としてありえないことになります。