実践演習 極限・微分積分系

三角関数の直交性【1994年度 九州大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

三角関数の直交性を基にした問題です。

「関数が直交?どういうこと?」

と思うかもしれません。

このあたりは、より抽象的に定義されるベクトル空間というものを学習しないとピンとこないものがあります。

背伸びをして中途半端に知ったかぶってもロクなことはありませんが、この先大学ではこういう世界が待っているということを垣間見て興味を抱きたいという意欲はWelcomeです。

(以下ネタバレ注意)

 

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(1) について

(i) 三角関数どうしの積の積分

積分においては、積の形よりも和の形の方が相性が良いことは言うまでもありません。

三角関数においては積の形を和の形に直すうってつけの公式

積和公式

というものがあります。

これにより、

\(\displaystyle \int_{0}^{\pi} \displaystyle \frac{1}{2} \{\cos{(m-n)x}-\cos{(m-n)x}\}dx\)

となります。

このあとは積分する際に分母に現れる \(m-n\) が場合分けのシグナルを発しています。

  • \(m=n\) のとき

\(\displaystyle \int_{0}^{\pi} \sin^{2}{mx} dx\)

\(=\displaystyle \int_{0}^{\pi} \displaystyle \frac{1-\cos{2mx}}{2} dx\)

\(=\displaystyle \frac{1}{2} \left[ x-\displaystyle \frac{1}{2m}\sin{2mx} \right]_0^{\pi}\)

\(=\displaystyle \frac{\pi}{2}\)

  • \(m \neq n\) のとき

\(\displaystyle \int_{0}^{\pi} \displaystyle \frac{1}{2} \{\cos{(m-n)x}-\cos{(m-n)x}dx\)

\(=\displaystyle \frac{1}{2}\left[ \displaystyle \frac{1}{m-n}\sin{(m-n)x}-\displaystyle \frac{1}{m+n}\sin{(m+n)x} \right]_0^{\pi}\)

\(=0\)

となります。

特に、\(m \neq n\) のときの

\(\displaystyle \int_{0}^{\pi} \sin{mx}\sin{nx} dx=0\)

という結果は三角関数の直交性と呼ばれます。

これは先述した拡張したベクトルの世界(ベクトル空間)において、定積分という演算が内積の一種である(内積という演算が満たす各種性質を満たしている)ということがもとになっています。

なお、この直交性は様々な関数を三角関数の級数として表すという理工学上重要な

「フーリエ級数展開」

というものの基となる重要な性質です。

(ii) について

裸の \(x\) と三角関数との積についての積分であり、これについては「部分積分」の一択でしょう。

(2) について

今回の被積分関数

\((a\sin{x}+b\sin{2x}+c\sin{3x}-x)^{2}\)

を展開すると、 (1) で考えた形が次々と現れていきます。

特に、2乗展開のクロスタームにおいては (1) で計算した三角関数の直交性が劇的に効いてきます。

問題を解くということに集中すれば、(1) の結果を用いて \(I\) を計算すると

\(I=\displaystyle \frac{\pi}{2}a^{2}+\displaystyle \frac{\pi}{2}b^{2}+\displaystyle \frac{\pi}{2}c^{2}-2 \pi a+\pi b-\displaystyle \frac{2\pi}{3}c+\displaystyle \frac{1}{3} {\pi}^{3}\)

となります。

なので、

\(I=\displaystyle \frac{\pi}{2}(a-2)^{2}+\displaystyle \frac{\pi}{2}(b+1)^{2}+\displaystyle \frac{\pi}{2}(c-\displaystyle \frac{2}{3})^{2}+\displaystyle \frac{1}{3}{\pi}^{3}-\displaystyle \frac{49}{18} \pi \)

と平方完成して処理すれば、

\(a=2\) ,  \(b=-1\) ,  \(c=\displaystyle \frac{2}{3}\) のとき

\(I\) は最小値 \(\displaystyle \frac{1}{3}{\pi}^{3}-\displaystyle \frac{49}{18} \pi \)

をとることが分かります。

三角関数の和と、\(y=x\) という1次式との誤差的なもの(正確には誤差とは言いませんが)を最小にするという意味で、先ほど少し述べたフーリエ級数展開の世界が垣間見れます。

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