2022年度京大理系 各解説記事
2022年度 京都大学 理系第1問【対数の数値評価】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 年度問題として、見た目のインパクトが大きい問題です。 対数は道具として使うことが多く、 この対数がどれぐらいの大きさなんだろう という対数そのものに対する興味がないと、問題意識がもてないかもしれません。 そういった意味で京大はこういうボディーブローのように受験生が「ウッ」となるところをつついてくるのがうまいですね。 例えば \(\sqrt{2022}\) がどれぐらいの大きさか と言われたときに何をすればよいのかで迷う人はいないでしょう。 そ ...
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2022年度 京都大学 理系第2問【距離が2以上離れる3整数についての確率】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 京大らしいシンプルな題意です。 2005年度の京大に類似する設定の過去問があります。 題意を満たす整数の組 \((X \ , \ Y \ , \ Z)\) の個数を数え上げるわけですが、複数の方針が考えられます。 方針1 愚直に数える方針としては \(Y=k\) などと固定すると、 というようなイメージで考え、 \(X\) のとり得る値としては \(1\) から \(k-2\) までの \(k-2\) 通り \(Z\) のとり得る値としては ...
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2022年度 京都大学 理系第3問【3整数の最大公約数】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 第3問もシンプルな題意です。 3つの整数の最大公約数をいきなり扱おうとしても中々難しいものがあると思います。 ひとまず2つの最大公約数を考えようとするのが自然でしょう。 そこで、\(n^{2}+2\) と \(n^{4}+2\) の最大公約数 \(G_{n}\) について考えてみます。 \(n^{4}+2=(n^{2}-2)(n^{2}+2)+6\) ですから、ユークリッドの互除法により \(G_{n}\) は \(n^{2}+2\) と \ ...
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2022年度 京都大学 理系第4問【四面体の各種考察】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 四面体に関する各種考察問題です。 京大は過去、対称性を意識したような四面体に関する論証を割とよく出題していました。 本問はパッと見ただけでは対称性というのは見えませんが、よくよく観察してみると結構対称性が隠れています。 ただ、本問の場合、機械的にベクトルでゴリゴリ進めていって何の問題もありません。 試験場においても、下手に時間を失うリスクを考えれば確実にベクトルで処理した方がよいと思います。 ベクトルで処理していって処理量が爆発するようだと考 ...
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2022年度 京都大学 理系第5問【面積計算と面積比の評価】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) (1) , (2) は京大受験生であれば確保したい典型的な微積分の問題です。 (1) は実質 \(\displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \cos^{3}x dx\) という積分計算に過ぎません。 (2) も \(f(t)=t\cos^{3}{t}\) と、即立式でき、 \(f'(t)=\cos^{2}{t}(\cos{t}-3t\sin{t})\) となります。 \(3t\sin{t}\) という関数 ...
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2022年度 京都大学 理系第6問【漸化式と周期性】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 2種類の数列 \(\{x_{n}\}\) , \(\{y_{n}\}\) に対して、その差を取った数列 \(\{x_{n}-y_{n}\}\) の一般項 \(x_{n}-y_{n}\) を求めるという問題です。 \(\{y_{n}\}\) の方は具体的に与えられているので、そこまで恐れる必要はないでしょうが、問題は数列 \(\{x_{n}\}\) の漸化式の方です。 構造上 \(x_{n}\) が分かって、次の \(x_{n+1}\) が求 ...
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と、形式に変更はありません。
分野的トピックス
対数、確率、整数、ベクトル(幾何)、微積分、数列
と、バランスよく出題されていました。
数学Ⅲからの出題は第5問のみで、比較的ⅠAⅡB中心の出題でした。
各大問について
第1問(やや易)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
見た目のインパクトが大きい年度絡みの問題です。
対数は普段道具として用いることが多いですが、そもそもは「数」であり、大体どのぐらいの数なのか、それを調べるにはどうすればよいのかという
「数への興味」
をもっていないと、中々こういう問題意識をもてないかもしれません。
計算の仕方や式変形はできる高校生は多いかもしれませんが、そもそも何を計算すればよいのか、何を目指して式変形していけばいいのかを判断するためには、上記のように
- そもそも対数って何か?
- どんな性質があるのか?
- 対数を勉強すると何がおいしいのか?
などという非常に原始的な部分が必要です。
なお、対数を近似値ではなく、不等式評価して与えるというのが京大の特徴です。
例えば、\(\log_{10}{2}\) については
\(\log_{10}{2}=0.3010\) は本当の「=」ではない。
だから、我々が率先してこのような使い方で問うべきではない。
というある種「対数への愛」のようなものを感じます。(考えすぎ?)
ただ、上述した原始的な部分はまさに「対数への愛」だと思います。
\(2022\) に近く、\(\log_{10}{2}\) の情報のみで表せるように \(2000=2^{4}\cdot 5^{3}\) で評価する部分に若干の山場があるものの、難易度はやや易です。
第2問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
シンプルな題意です。
題意を満たす \((X \ , \ Y \ , \ Z)\) の組の個数を愚直に数え上げるという方法で十分捌ききれます。
その他にも余事象を用いる方法や、うまく題意を言い換える方法もあり、目に付いた方針で処理しきることは可能です。
難易度は標準です。
第3問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
これまた非常にシンプルな問題です。
最大公約数だから、ユークリッドの互除法を用いながら色々やっていくんだろうな
ということは見た瞬間に判断できると思います。
ただ、ユークリッドの互除法で、いきなり3つの最大公約数を捌くことはできませんから、
という気持ちで、
\(n^{2}+2\) , \(n^{4}+2\) の最大公約数 \(G_{n}\)
を考え、それが残る \(n^{6}+2\) の約数になっているかどうかということをチェックすることになります。
なお、\(G_{n}\) を求めるにあたり、
\(n^{4}+2=(n^{2}-2)(n^{2}+2)+6\)
という関係式からユークリッドの互除法を用いると、\(G_{n}\) は
- \(n^{2}+2\) と \(6\) の最大公約数
ということになり、\(n\) を \(6\) で割った余りで分類していくことになります。
近年の京大の整数問題は \(\mathrm{mod} 3\) で考える問題ばかりだったことを考えると、今年は
「どうせ \(\mathrm{mod} 3\) だろ」
的な乱暴な考え方をする人の足をすくおうという意図があったのかもしれません。
難易度は標準です。
第4問(易)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
今年のセットで絶対に落としてはいけない問題だということは、見た瞬間に分からないといけません。
それぐらいの基本的な問題です。
試験場補正を考えたとしても、確保したい問題で手が止まることがあってはなりません。
ある意味フィルター的役割としての出題枠だったのかもしれません。
難易度は易です。
第5問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
前半の (1) , (2) は基本的な微積分の問題ですが、(3) は決して簡単ではないと思います。
全体的には手際よく仕留めなければいけない部分と、観察力や洞察力を通じて頭を使う部分がうまく1問の中に盛り込まれていると感じました。
詳しくは個別の解説記事でお話ししています。
個人的には今年のセットで最も差が付きやすい問題だと感じました。
難易度は標準です。
第6問(やや難)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
問題の全体をパッと見て唯一
「なんだこれ?」
と思った問題です。
「やってみないと分からんタイプの問題だな」
というのが最初に見たときの印象です。
得体のしれない漸化式に対しては、実験して手を動かしていく中で何か気づくことはないかと目を光らせることが大切になってきます。
本問はそれなりに気がつかなければならないポイントが多く、構想から組み立てるとなるとそれなりに時間とエネルギーが必要かもしれません。
難易度はやや難です。
全体的に
昨年は数Ⅲからの出題が多く、計算主体の問題が多かったです。
今年は計算量も去年に比べ負担が減っていると思います。
第1問から第4問までは完答しやすい問題であり、「ん?」と考え込む問題は第6問ぐらいです。
昨年は
「パッと見て簡単そうに見えるが、やってみると意外と五月蝿い問題」
というのが特徴でしたが、今年は
「パッと見て簡単そうに見えて、やってみたらアッサリ終わってしまった」
というのが多かったと思います。
総合的に見て昨年に比べてやや易化と言えます。
京大の難易の振れ幅が結構激しいですが、来年以降の受験生の方は
- ひとまずどっしり構えて何が訊かれても対応できるように準備する
という王道的な態度で準備してください。
2022年度京大理系 各解説記事
2022年度 京都大学 理系第1問【対数の数値評価】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 年度問題として、見た目のインパクトが大きい問題です。 対数は道具として使うことが多く、 この対数がどれぐらいの大きさなんだろう という対数そのものに対する興味がないと、問題意識がもてないかもしれません。 そういった意味で京大はこういうボディーブローのように受験生が「ウッ」となるところをつついてくるのがうまいですね。 例えば \(\sqrt{2022}\) がどれぐらいの大きさか と言われたときに何をすればよいのかで迷う人はいないでしょう。 そ ...
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2022年度 京都大学 理系第2問【距離が2以上離れる3整数についての確率】
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2022年度 京都大学 理系第3問【3整数の最大公約数】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 第3問もシンプルな題意です。 3つの整数の最大公約数をいきなり扱おうとしても中々難しいものがあると思います。 ひとまず2つの最大公約数を考えようとするのが自然でしょう。 そこで、\(n^{2}+2\) と \(n^{4}+2\) の最大公約数 \(G_{n}\) について考えてみます。 \(n^{4}+2=(n^{2}-2)(n^{2}+2)+6\) ですから、ユークリッドの互除法により \(G_{n}\) は \(n^{2}+2\) と \ ...
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2022年度 京都大学 理系第4問【四面体の各種考察】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 四面体に関する各種考察問題です。 京大は過去、対称性を意識したような四面体に関する論証を割とよく出題していました。 本問はパッと見ただけでは対称性というのは見えませんが、よくよく観察してみると結構対称性が隠れています。 ただ、本問の場合、機械的にベクトルでゴリゴリ進めていって何の問題もありません。 試験場においても、下手に時間を失うリスクを考えれば確実にベクトルで処理した方がよいと思います。 ベクトルで処理していって処理量が爆発するようだと考 ...
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2022年度 京都大学 理系第5問【面積計算と面積比の評価】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) (1) , (2) は京大受験生であれば確保したい典型的な微積分の問題です。 (1) は実質 \(\displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \cos^{3}x dx\) という積分計算に過ぎません。 (2) も \(f(t)=t\cos^{3}{t}\) と、即立式でき、 \(f'(t)=\cos^{2}{t}(\cos{t}-3t\sin{t})\) となります。 \(3t\sin{t}\) という関数 ...
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問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 2種類の数列 \(\{x_{n}\}\) , \(\{y_{n}\}\) に対して、その差を取った数列 \(\{x_{n}-y_{n}\}\) の一般項 \(x_{n}-y_{n}\) を求めるという問題です。 \(\{y_{n}\}\) の方は具体的に与えられているので、そこまで恐れる必要はないでしょうが、問題は数列 \(\{x_{n}\}\) の漸化式の方です。 構造上 \(x_{n}\) が分かって、次の \(x_{n+1}\) が求 ...
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