2024年度京大理系 各解説記事
2024年度 京都大学理系第1問【立方体の隣り合う面が異色で塗られる確率】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \(n\) 色を準備し、立方体の各面を隣り合う面が異色となるように塗り分ける確率について考察する問題です。 立方体の塗り分けについての場合の数の問題だと、回転による一致や、裏返しによる一致を考慮する必要が出てきたりして、苦い思いをした経験がある人が多いと思います。 それに引きずられると、下手なことを考え出してクシャクシャになりかねません。 本問は確率の問題であり、各面に区別をつけ、全事象を \(n^{6}\) 通りとして考えることで、上述の回 ...
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2024年度 京都大学理系第2問【独立に動く2点を結ぶ線分の中点の存在領域】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 円板上の点と円周上の点を両端にもつ線分の中点の存在領域を考える問題です。 複素数 \(x\) , \(y\) はお互いに干渉することなく、独立に動くため、 まずは片方を固定し、1つずつ動かす という予選決勝法の考え方で捌いていくことを考えます。 その際、先にどちらを固定するかという点で体感のやりやすさ・やりにくさが若干変わってきます。 複素数を複素数のまま扱う方法もありますし、実部・虚部を持ち出し、 \(z=p+qi\) などとおいて、この ...
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2024年度 京都大学理系第3問【2直線がねじれの位置にあるための必要十分条件】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 2直線がねじれの位置にあるための必要十分条件を考える問題です。 必要十分条件ということであり、ねじれの位置にあるということを正確に翻訳するということになります。 直線 \(\mathrm{PX}\) , 直線 \(\mathrm{QY}\)がねじれの位置にあるとは 直線 \(\mathrm{PX}\) , 直線 \(\mathrm{QY}\) が平行でない かつ 直線 \(\mathrm{PX}\) , 直線 \(\mathrm{QY}\) ...
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2024年度 京都大学理系第4問【条件によって分岐する漸化式】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 項の偶奇によって、次の項を定めるための漸化式が変化する、変則的な漸化式についての問題です。 最初の一歩目に大きな山場があり、その山場をクリアーすれば計算量は少なくシンプルに解決に向かうという京大らしい問題です。 (1) , (2) がほぼ同じ要領であるため、(1) ができれば (2) も解決する可能性が高く、逆に (1) ができないと (2) も厳しいでしょう。 スタートの \(a_{0}\) から奇数が連続するということは奇数が連続してい ...
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2024年度 京都大学理系第5問【領域の面積と極限】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 連立不等式で表された領域の面積と、その極限に関する問題です。 今回扱う \(y=\displaystyle \frac{e^{x}-e^{-x}}{2}\) , \(y=\displaystyle \frac{e^{x}+e^{-x}}{2}\) は双曲線関数と呼ばれる有名曲線であり、 \(\sinh{x}=\displaystyle \frac{e^{x}-e^{-x}}{2}\) , \(\cosh{x}=\displaystyle ...
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2024年度 京都大学理系第6問【整数部分がn桁であるものの中で最高位の数字が1となるものの割合】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \(2^{\sqrt{k}}\) の整数部分が \(n\) 桁となるものの中で、最高位の数字が \(1\) となるものの割合について、その極限を考える問題です。 \(2^{\sqrt{k}}\) が \(n\) 桁ということは \(10^{n-1} \leq 2^{\sqrt{k}} \lt 10^{n}\) ということになり、整理すると \((\displaystyle \frac{n-1}{\log_{10}{2}})^{2} \leq ...
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と、形式に変更はありませんが、
2023年度の
に対して、2024年度は
と配点が変わりました。
分野的トピックス
6題中4題に数Ⅲが絡んでいます。特にオチが極限という問題が3題ありました。
また、昨年(2023年度)あった小問集合はなくなりました。
各大問について
第1問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
\(n\) 色を準備し、立方体の各面を隣り合う面が異色となるように塗り分ける確率について考察する問題です。
立方体の塗り分けについての場合の数の問題だと、回転による一致や、裏返しによる一致を考慮する必要が出てきたりして、苦い思いをした経験がある人が多いと思いますが、本問は確率の問題であり、各面に区別をつけ、全事象を \(n^{6}\) 通りとして考えることで、上述の回転による一致や裏返しによる一致などを考えることが不要になります。
下手なことを考えてクシャクシャになった受験生も一定数いたと思われます。
(2) の極限については感覚的に結論を予測することが可能であり、ある意味自明に近いものがあるため、導出過程をどのように記述するかが問われます。
難易度は標準でしょう。
第2問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
円板上の点と円周上の点を両端にもつ線分の中点の存在領域を考える問題です。
独立に動く2点を扱うということで、
という「予選決勝法」的な考え方を睨みたいところです。
先にどちらを固定するかで、体感の難しさが変わってきます。
計算量自体はそこまで多くはありません。
難易度は標準です。
第3問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
2直線がねじれの位置にあるための必要十分条件を考える問題です。
必要十分条件ということであり、ねじれの位置にあるということを正確に翻訳するということになります。
基本に忠実に
- \(\mathrm{O}\) を始点として、様々な位置ベクトルを3つの基底で表す
という態度で解き進めていけば問題ありません。
「論証の京大」と言われる京大が必要十分条件を求めよという訊き方をしているということで、必要性や十分性をしっかりと意識した答案をつくりたいところです。
難易度は標準でしょう。
第4問(やや難)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
項の偶奇によって、次の項を定めるための漸化式が変化する、変則的な漸化式についての問題です。
最初の一歩目に大きな山場があり、その山場をクリアーすれば計算量は少なくシンプルに解決に向かうという京大らしい問題です。
(1) , (2) がほぼ同じ要領であるため、(1) ができれば (2) も解決する可能性が高く、逆に (1) ができないと (2) も厳しいでしょう。
一旦理解してしまえば、決して難しくはないのですが、試験場での難易度は高く感じることでしょう。
難易度はやや難と言えると思います。
第5問(標準~やや難)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
連立不等式で表された領域の面積と、その極限に関する問題です。
若干の計算量はありますが、やること自体は明確で方針面で困ることがあっては厳しいでしょう。
オチの極限計算については、不定形の形から、その解消の手段を判断する力が問われます。
難易度は標準~やや難と割れるレベルでしょう。
第6問(やや難)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
\(2^{\sqrt{k}}\) の整数部分が \(n\) 桁となるものの中で、最高位の数字が \(1\) となるものの割合について、その極限を考える問題です。
背景にはベンフォードの法則が絡んでいると思われます。
途中、ガウス記号を設定する必要があり、ガウス記号が絡む極限を捌くことになります。
ガウス記号が絡んだ極限については、ガウス記号に関する不等式
\(x-1 \lt [x] \leq x\)
を用いて、はさみうちの原理で仕留めるというのが鉄板であり、このオチは見通していたいところです。
ただ京大らしく、ノーヒントでの出題ということもあり、設定力や構成力も含めた総合的な力が問われます。
難易度はやや難でしょう。
全体的に
2022年度、2023年度と続いていた易化傾向に歯止めがかかり、今年(2024年度)は一転して高い総合力が問われるセットでの出題となりました。
この温度差をある程度想定済みという受験生と、そうでない受験生で試験場での心理的負担は差がついたのではないかと思われます。
どの問題も何かしらのハードルがあり、完答を阻む要素を多く含むセットでした。
セットとしての難易度は昨年比でやや難化ですが、京大が過去牙をむいた年と比べると、従来の京大の標準レベルに戻ったと言った方がよいでしょう。
また、大問の配点が昨年と異なる点に驚いて、どの問題を優先すべきかという点で振り回された受験生も少なからずいたかもしれません。
試験場において、平常心を奪われることが一番恐ろしいことです。
来年度以降どうなるかについては分かりませんが、どのようなことがあるか分からないということはある程度想定しておき、落ち着いて判断できるようにしておきましょう。
2024年度京大理系 各解説記事
2024年度 京都大学理系第1問【立方体の隣り合う面が異色で塗られる確率】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \(n\) 色を準備し、立方体の各面を隣り合う面が異色となるように塗り分ける確率について考察する問題です。 立方体の塗り分けについての場合の数の問題だと、回転による一致や、裏返しによる一致を考慮する必要が出てきたりして、苦い思いをした経験がある人が多いと思います。 それに引きずられると、下手なことを考え出してクシャクシャになりかねません。 本問は確率の問題であり、各面に区別をつけ、全事象を \(n^{6}\) 通りとして考えることで、上述の回 ...
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2024年度 京都大学理系第2問【独立に動く2点を結ぶ線分の中点の存在領域】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 円板上の点と円周上の点を両端にもつ線分の中点の存在領域を考える問題です。 複素数 \(x\) , \(y\) はお互いに干渉することなく、独立に動くため、 まずは片方を固定し、1つずつ動かす という予選決勝法の考え方で捌いていくことを考えます。 その際、先にどちらを固定するかという点で体感のやりやすさ・やりにくさが若干変わってきます。 複素数を複素数のまま扱う方法もありますし、実部・虚部を持ち出し、 \(z=p+qi\) などとおいて、この ...
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2024年度 京都大学理系第3問【2直線がねじれの位置にあるための必要十分条件】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 2直線がねじれの位置にあるための必要十分条件を考える問題です。 必要十分条件ということであり、ねじれの位置にあるということを正確に翻訳するということになります。 直線 \(\mathrm{PX}\) , 直線 \(\mathrm{QY}\)がねじれの位置にあるとは 直線 \(\mathrm{PX}\) , 直線 \(\mathrm{QY}\) が平行でない かつ 直線 \(\mathrm{PX}\) , 直線 \(\mathrm{QY}\) ...
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2024年度 京都大学理系第4問【条件によって分岐する漸化式】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 項の偶奇によって、次の項を定めるための漸化式が変化する、変則的な漸化式についての問題です。 最初の一歩目に大きな山場があり、その山場をクリアーすれば計算量は少なくシンプルに解決に向かうという京大らしい問題です。 (1) , (2) がほぼ同じ要領であるため、(1) ができれば (2) も解決する可能性が高く、逆に (1) ができないと (2) も厳しいでしょう。 スタートの \(a_{0}\) から奇数が連続するということは奇数が連続してい ...
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2024年度 京都大学理系第5問【領域の面積と極限】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 連立不等式で表された領域の面積と、その極限に関する問題です。 今回扱う \(y=\displaystyle \frac{e^{x}-e^{-x}}{2}\) , \(y=\displaystyle \frac{e^{x}+e^{-x}}{2}\) は双曲線関数と呼ばれる有名曲線であり、 \(\sinh{x}=\displaystyle \frac{e^{x}-e^{-x}}{2}\) , \(\cosh{x}=\displaystyle ...
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2024年度 京都大学理系第6問【整数部分がn桁であるものの中で最高位の数字が1となるものの割合】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \(2^{\sqrt{k}}\) の整数部分が \(n\) 桁となるものの中で、最高位の数字が \(1\) となるものの割合について、その極限を考える問題です。 \(2^{\sqrt{k}}\) が \(n\) 桁ということは \(10^{n-1} \leq 2^{\sqrt{k}} \lt 10^{n}\) ということになり、整理すると \((\displaystyle \frac{n-1}{\log_{10}{2}})^{2} \leq ...
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