実践演習 方程式・不等式・関数系

積と和が等しい複素数の組【2000年度 群馬大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

\(xyz=x+y+z\) という関係式を満たす自然数の組を求めさせる問題は整数問題の典型問題としてよくありますが、複素数としての問題で考えようという問題です。

題意が分かりやすく、共有しやすい問題です。

最初から手際よく処理できれば問題ないですが、泥臭く完答を狙っていくこともできますので試験場のつもりで取り組んでみてください。

本問は医学部の問題で、完答するためにはそれなりにスタミナが必要になるでしょう。

(以下ネタバレ注意)

 

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条件の立式

ひとまず、大きさと偏角の情報があるため、極形式を用いて考えていきたいところです。

問題の条件から

  • \(x=\cos{(\theta-\alpha)}+i\sin{(\theta-\alpha)}\)
  • \(y=\cos{\theta}+i\sin{\theta}\)
  • \(z=\cos{(\theta+\alpha)}+i\sin{(\theta+\alpha)}\)

とおくことができるでしょう。

これにより、積である \(xyz\) ,  和である \(x+y+z\) を立式できます。

積について

ガチンコで展開しだすのはどう考えても悪手です。

極形式の積において、偏角は和で処理するという基本に基づいて計算します。

そうなると

  • \(xyz=\cos{3\theta}+i\sin{3\theta}\)

となります。

和について

加法定理を用いると

\(\begin{eqnarray}
\cos{(\theta-\alpha)}+\cos{(\theta+\alpha)} &=& (\cos{\theta}\cos{\alpha}+\sin{\theta}\sin{\alpha})+(\cos{\theta}\cos{\alpha}-\sin{\theta}\sin{\alpha}) \\
&=& 2 \cos{\theta} \cos{\alpha}
\end{eqnarray}\)

\(\begin{eqnarray}
\sin{(\theta-\alpha)}+\sin{(\theta+\alpha)} &=& (\sin{\theta}\cos{\alpha}-\cos{\theta}\sin{\alpha})+(\sin{\theta}\cos{\alpha}+\cos{\theta}\sin{\alpha}) \\
&=& 2 \sin{\theta} \cos{\alpha}
\end{eqnarray}\)

と計算できます。

これにより、和である \(x+y+z\) は

$$\begin{eqnarray}
x+y+z &=& 2 \cos{\theta} \cos{\alpha}+\cos{\theta}+i(2 \sin{\theta} \cos{\alpha}+\sin{\theta}) \\
&=&\cos{\theta}(2\cos{\alpha}+1)+i\{\sin{\theta}(2\cos{\alpha}+1)\}  \\
&=& (\cos{\theta}+i\sin{\theta})(2\cos{\alpha}+1)
\end{eqnarray}$$

となります。

与えられた条件式

以上から \(xyz=x+y+z\) という条件式は

\(\cos{3\theta}+i\sin{3\theta}=(\cos{\theta}+i\sin{\theta})(2\cos{\alpha}+1)\)

という条件式となります。

少しでも処理を楽にするためには

\((\cos{\theta}+i\sin{\theta})(\cos{2\theta}+i\sin{2\theta})=(\cos{\theta}+i\sin{\theta})(2\cos{\alpha}+1)\)

と見て、\(\cos{\theta}+i\sin{\theta}\) を約分したいところです。

\(\cos{\theta}+i\sin{\theta}\) は大きさが \(1\) の複素数で、\(0\) ではありません。

なので、約分すれば

\(\cos{2\theta}+i\sin{2\theta}=2\cos{\alpha}+1\)

となります。

実部・虚部を比較すれば

$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
\cos{2\theta} = 2\cos{\alpha}+1 \\
\sin{2\theta} = 0
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

という関係式を得るため、ここから先は三角関数に関する方程式の基本的な運用ということになります。

因数分解に気が付かなかったら

上述の

$$\begin{eqnarray}
x+y+z &=& 2 \cos{\theta} \cos{\alpha}+\cos{\theta}+i(2 \sin{\theta} \cos{\alpha}+\sin{\theta}) \\
&=&\cos{\theta}(2\cos{\alpha}+1)+i\{\sin{\theta}(2\cos{\alpha}+1)\}  \\
&=& (\cos{\theta}+i\sin{\theta})(2\cos{\alpha}+1)
\end{eqnarray}$$

という因数分解に気が付かなかった場合、多少腕力は必要になるでしょうがそれでも処理は可能です。

その路線については【戦略2】【解2】で触れています。

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