実践演習 幾何・ベクトル系

動点の存在範囲【直線のベクトル方程式の拡張】【1976年度 東京大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

本問は当時の受験生が試験直後、

「これどうやって解くの?」

とざわついた問題だそうです。

確かに一見、掴みどころのない問題に見えますが、手を動かしていくうちに「要領」は分かってくるでしょう。

ただ、それをうまく言語化する、あるいは式に落とし込む部分が難しく、腕の見せ所です。

本問は東大お得意の「これは基本だよね?じゃあこうなったらどうする?」という味付けの問題で良問です。

ただ、ストレートではなく、少々薄皮一枚かぶせたような聞き方(問い方)をしているため、その味付けに気が付くのも難しいかもしれません。

 

(以下ネタバレ注意)

 

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点 \(P\) が進む方向は決まっている

点 \(P\) が進む方向を表す方向ベクトルは

\(\left(
\begin{array}{c}
1 \\
\sqrt{3} \\
\end{array}
\right)\)\(\longrightarrow\)\(\left(
\begin{array}{c}
-\sqrt{3} \\
1 \\
\end{array}
\right)\)\(\longrightarrow\)\(\left(
\begin{array}{c}
-1 \\
-\sqrt{3} \\
\end{array}
\right)\)\(\longrightarrow\)\(\left(
\begin{array}{c}
\sqrt{3} \\
-1 \\
\end{array}
\right)\)

と左折するごとに周期的に変化していきます。

そこで、

\(\vec{v_{1}}=\left(
\begin{array}{c}
1 \\
\sqrt{3} \\
\end{array}
\right)\) ,  \(\vec{v_{2}}=\left(
\begin{array}{c}
-\sqrt{3} \\
1 \\
\end{array}
\right)\) ,  \(\vec{v_{3}}=\left(
\begin{array}{c}
-1 \\
-\sqrt{3} \\
\end{array}
\right)\) ,  \(\vec{v_{4}}=\left(
\begin{array}{c}
\sqrt{3} \\
-1 \\
\end{array}
\right)\)

として、

1秒間の内訳

\(\vec{v_{1}}\) 方向に進む時間を \(t_{1}\) ,

\(\vec{v_{2}}\) 方向に進む時間を \(t_{2}\) ,

\(\vec{v_{3}}\) 方向に進む時間を \(t_{3}\) ,

\(\vec{v_{4}}\) 方向に進む時間を \(t_{4}\)

などと設定して考えていきます。

これにより、点 \(Q\) の位置ベクトル \(\overrightarrow{ OQ }\) が

\(\overrightarrow{ OQ }=t_{1}\vec{v_{1}}+t_{2}\vec{v_{2}}+t_{3}\vec{v_{3}}+t_{4}\vec{v_{4}}\)

と式として得られることになります。

もちろん、\(t_{1}+t_{2}+t_{3}+t_{4}=1\)  を満たしながら動くときに \(Q\) の存在範囲を考えることになります。

本問は基本の拡張

直線のベクトル方程式

\(\overrightarrow{ OP }=s\overrightarrow{ OA }+t\overrightarrow{ OB }\)  ( \(s+t=1\) )

で与えられる点 \(P\) の存在範囲は、直線 \(AB\) 上である

という基本事項は、難関大受験生であればもちろんインストール済みでしょう。

そう考えると本問は

\(\overrightarrow{ OQ }=t_{1}\vec{v_{1}}+t_{2}\vec{v_{2}}+t_{3}\vec{v_{3}}+t_{4}\vec{v_{4}}\)  ( \(t_{1}+t_{2}+t_{3}+t_{4}=1\)  )

で与えられる点 \(Q\) の存在範囲を考える問題で、上記基本事項の拡張であることが分かります。

上記基本事項を活かすような方針や式変形である

\(\overrightarrow{ OQ }=(t_{1}+t_{2})\cdot \displaystyle \frac{t_{2}\vec{v_{2}}+t_{1}\vec{v_{1}}}{t_{1}+t_{2}}+(t_{3}+t_{4})\cdot \displaystyle \frac{t_{4}\vec{v_{4}}+t_{3}\vec{v_{3}}}{t_{3}+t_{4}}\)

と見ることができればしめたものでしょう。

この式変形は初学者の段階ではテクニカルに見えるものの、学習を積み重ねていくうちに「常套手段の一つ」というレベルに昇華しているはずです。

この後の細々とした議論については解答で詰めてあります。

解答はコチラ

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