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ニュートンの補間法と呼ばれるものが背景にある問題を扱います。
問題を解くこと自体はできるかもしれませんが、どこからそんな発想が出てきたのかは中々難しいものがあると思います。
多項式を代入値で表すという独特の考え方であり、過去の数学者たちの知恵のようなものですから勉強していないと天下り的に感じるのも無理はありません。
ひとまずは問題を解くことに集中し、余裕があればこの問題の出どころを見てみましょう。
ニュートンの補間法についての知識そのものが劇的に出来不出来に直結するということはないので、そこは安心してください。
(以下ネタバレ注意)
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(1) について
f(x) を
f(x)=p \cdot \displaystyle \frac{x(x-1)(x+1)}{6}+q \cdot \displaystyle \frac{x(x-1)}{2}+rx+s
という形で表すからには
f(-1) , f(0) , f(1)
を調べたくなるでしょう。
s について
まずは p , q , r を含む項が消えるよう、x=0 を代入してみます。
すると
f(0)=s=d
ということで、s については解決しました。
r について
次に、p , q を含む項が消えるよう、x=1 を代入してみます。
すると
f(1)=r+s=a+b+c+d
を得て、s=d であったことを考えると
r=a+b+c
となり、r についても解決しました。
q について
p を含む項が消えるよう、x=-1 を代入してみます。
すると
f(-1)=q-r+s=-a+b-c+d
となり、s=d , r=a+b+c ですから、q も a , b , c , d を用いて表すことができ、解決です。
p について
最後に、x=2 を代入してみると
f(2)=p+q+2r+s=8a+4b+2c+d
となり、q , r , s が a , b , c , d を用いて表されていますから、p も a , b , c , d を用いて表すことができ、解決します。
(2) について
s は整数
f(0)=s であり、f(0) が整数であることから
s は整数
ということになります。
r は整数
f(1)=r+s
ということから
r=f(1)-s
ですから、f(1) , s が整数ということになると
r も整数
ということが言えます。
q は整数
f(-1)=q-r+s
ということから
q=f(-1)+r-s
となり、f(-1) , r , s が整数ということになると
q も整数
ということが言えます。
p は整数
最後に
f(2)=p+q+2r+s
ということから
p=f(2)-q-2r-s
ということになり、f(2) , q , r , s が整数ということになると
p も整数
となります。
連続 k 整数の積
任意の整数 n に対して
f(n)=p \cdot \displaystyle \frac{n(n-1)(n+1)}{6}+q \cdot \displaystyle \frac{n(n-1)}{2}+rn+s
であり、
- p , q , r , s は整数
と言えていますから、あとは、分数部分である
- \displaystyle \frac{n(n-1)(n+1)}{6}
- \displaystyle \frac{n(n-1)}{2}
が任意の整数 n に対して整数となることが言えれば解決です。
ここで
- n(n-1)(n+1) は連続3整数の積なので、3! の倍数
- n(n-1) は連続2整数の積なので、2! の倍数
ということが言えます。
なお、一般に
重要事項
連続 k 整数の積は k! の倍数
ということが言えます。
これより、
- \displaystyle \frac{n(n-1)(n+1)}{6}
- \displaystyle \frac{n(n-1)}{2}
はともに整数ということになり、f(n) は整数ということが言え、解決します。
ニュートンの補間法
f(x)=ax^{3}+bx^{2}+cx+d
という f(x) に対して、
f(0)=s , f(1)=r , f(-1)=q , f(2)=p
としたとき、
- f(x) を p , q , r , s (代入値) で表したい
ということを考えてみます。
まともにやると
通常
- f(0)=d=s
- f(1)=a+b+c+d=r
- f(-1)=-a+b-c+d=q
- f(2)=8a+4b+2c+d=p
という関係式を得て、これを a , b , c , d の連立方程式と見て解くという手順を経ます。
工夫すると
これを工夫し、
f(x)=a_{0}+a_{1}x+a_{2}x(x-1)+a_{3}x(x-1)(x+1)
と設定してみると
- f(0)=a_{0}=s
- f(1)=a_{0}+a_{1}=r
- f(-1)=a_{0}-a_{1}+2a_{2}=q
- f(2)=a_{0}+2a_{1}+2a_{2}+6a_{3}=p
なので、
- a_{0}=s
- a_{1}=r-a_{0}
- a_{2}=\displaystyle \frac{-a_{0}+a_{1}+q}{2}
- a_{3}=\displaystyle \frac{-a_{0}-2a_{1}-2a_{2}+p}{6}
というように
a_{0} \to a_{1} \to a_{2} \to a_{3}
と順次 p , q , r , s という代入値で表せることになります。
f(x) を代入値で表しなおしたものを
補間多項式
と言い、今回のやり方を
ニュートンの補間法
と言います。
ラグランジュの補間法
ニュートンの補間法のほかにも
ラグランジュの補間法
と呼ばれるものもあり、そちらについては
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参考ラグランジュの補間法【1989年度 関西大学】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) ラグランジュの補間法に関連する問題を扱ってみます。 一見するとゴッツい形になりますが、中身を見て見ると心地よさを感じる内容です。 (以下 ...
続きを見る
も参考にしてみてください。
整数値多項式
今回の問題のように
整数を代入したら、代入値も整数となる
という整数値多項式については
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参考整数値多項式【整数を代入したら整数が返ってくる多項式】【2013年度 中央大学ほか】
例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 類題1はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 類題2はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 整数 ...
続きを見る
でも取り扱っています。